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子どもの小さな変化に寄り添う

 稚内の小学校の先生、平嶋大さんに僕は一度

お会いしたことがある。

 模擬授業を見させていただいたことがある。

 授業が上手いなーと思った。

 派手なパフォーマンスがあるわけでもない。

でも、安心してその場におられる上手さに心惹

かれた。

 同時に、温かい方だなーと思った。

 自分が子どもだったら、安心してその場におれ

る野ではないか・・・そのような気がした。

 ご紹介するこの原稿。ご実践。

 その秘密がわかる気がした。

 いつか、稚内で授業をライブで拝見したいな・・。

(以下、メルマガを転載)

メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
                148号 2011年10月4日発行
                      (毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1 子どもの小さな変化に寄り添い、声に耳を傾けてみる
          「インクルージョン」編集委員
              北海道稚内市立稚内南小学校  平嶋 大
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 最北の地、稚内から、平嶋大さんの原稿です。「協同学習」にも力を入
れる平嶋さんの実践報告を、じっくりお読みください。  (石川 晋)
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1 子どもの小さな変化に寄り添い、声に耳を傾けてみる
          「インクルージョン」編集委員
              北海道稚内市立稚内南小学校  平嶋 大
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■「全体的な見取り」から「個々の小さな変化の見取り」へ

「その、モチモチの、木に、…今夜は、ひがともる、ばんなんだそうだ。
じさまが言った。…」
 少しつかえながらも、Aがすっすっと音読をしています。
 背筋がぴっと伸びていて表情もいい。
 適度な緊張感が伝わってきました。
 国語の学習で取り入れてみた「ペア音読」の場面です。
『モチモチの木』(斎藤隆介作)の3の場面を、いきいきと音読するAの
姿に驚かされました。
 これまでも、ペア音読をはじめ、ペアやグループを使った学習活動に積
極的に取り組んできました。ペアで楽しそうにカードを並べ替える姿や、
ちょっと緊張しながらグループ内で発表し合う様子など、活動中は、子ど
も達の全体的な様子を見取ることを心がけていました。しかし、今回出会
ったエピソードをきっかけに、個々の小さな変化を見取ることの大切さに
ようやく気付くことができました。
「音読が苦手なAが、ペアになったBとの関わりを通して少し上達した。」
という本当に小さなエピソードです。これをもとにインクルージョンの発
想に立つ子ども同士の関わり方について考えてみました。

■Aのつまずきに応えられない

「先生、お腹が痛いからトイレに行ってきます。」
「先生、腕が痛いから保健室行ってきてもいいですか?」
 3年生の1学期。国語の時間になるときまってAは、体の痛みを訴えて
きました。本当に痛かったのかもしれませんが、国語の学習を避けるため
に発していた、私へのサインだったのだろうと思います。Aは、読み書き
におけるつまずきが顕著な子どもでした。しかし私は、そのサインに気づ
きながらも、つまずきを取り除くための具体的な支援になかなか踏み切れ
ずにいました。悶々としたまま1学期が過ぎました。

■ペア音読で小さな変化が見えた

 ペア音読は、Aのつまずきを支援するというよりは、音読の機会をでき
る限り多く保障すること、そして文章を正確に読むことの2つを主な目的
とした取り組みでした。スタートは、インクルージョンの発想からは、か
なり遠いところにありました。
 ペア音読の元実践は、白石範孝氏(筑波大学附属小学校教諭)による「
音読対話」です。これをベースにしながら、以下のように取り組みました。

1.隣同士でペアをつくり、椅子ごと体を向かい合わせる。
2.じゃんけんをして順番を決める。
3.先に読む子は、ペアになった子に音読を聞いてもらう。
音読する時のポイントは3つ。
   ア)相手に聞こえる声の大きさで読む
   イ)スラスラと正確に読む
   ウ)句読点に気をつけて読む
4.聞いている子は、3つのポイントを意識しながら聞く。
5.聞き終えたら、ペアの子の音読カードに「◎ ○ △」の3段階で評
価をし、「スラスラ読めるようになったね!」「次もがんばってね。」な
ど、肯定的なメッセージを書いて相手に伝える。
6.交替して同様に音読をする。

 1時間目「1の場面」。
 さっそくペア音読が始まりました。じゃんけんをして順番が決まったペ
アから音読の声が聞こえてきます。
「もう五つにもなったんだから、…これ何て読むの?」
「どれ?これ?<よなか>だと思うよ。」
「夜中に一人で、せっちん?ぐらいに行けたっていい。…」
 民話風の文体であるため、読みにくそうにしている子どもが多く見られ
ました。お互いに教え合いながら何とか読み進めていきます。音読後は、
お互いの音読カードに書かれたメッセージを嬉しそうに読んでいました。
 この時、AとBのペア音読は、他のペアよりかなり時間がかかっていま
した。

3時間目「3の場面」。
 この時、ふとAの変化に気がつきました。
A「しもつきの、」
B「二十日。」
A「二十日のうしみつにゃあ、モチモチの木に、ひがともる。…」
B「起きてて。」
A「起きてて見てみろ、そりゃあきれいだ。…」
 つかえながらも、かなりスラスラと音読していました。ペアになったB
のフォローが絶妙のタイミングで入っているのがわかりました。

 この後、4時間目、5時間目と進むにつれて、Aの音読は、どんどん変
化していきました。特に、最後の「5の場面」では、他のペアとほぼ同じ
時間で読み終えていました。いつもは、前かがみで教科書に顔をくっつけ
るようにして音読しているAが、姿勢もよく、いい表情を見せていたこと
も印象的でした。
 そして、その日の給食の準備中から、進んで音読練習を始めました。

■子どもの声を聞いてみる

 給食準備中に1人で練習をするAを見ていたら、Aの心の中で起こって
いることを聞いてみたくなりました。同じように、Bにも聞きたくなりま
した。

 まずは、Aを呼んで素直な気持ちを伝えました。
『音読、すごく上手になったね!難しい漢字も言葉もスラスラと読めてい
て、先生とってもびっくりして嬉しかったよ。』
 すると、Aは嬉しそうな表情を浮かべながら大きく頷きました。
『それでね、もしわかったら教えてほしいんだけど、どうして上手になっ
たんだと思う?』
 Aには難しい質問でした。聞いてから「しまった」と思いましたが、A
が自分なりに出す答えをじっと待ってみることにしました。
「うーんとね…。うーん…。」
 上を向きながらしばらく考えていたAが、ゆっくりと話し始めました。
「Bがいたから。Bがね、教えてくれたの。」
『そうなんだ。教えてくれたんだ、良かったね!何を教えてくれたの?』
「ん、漢字とか…。」
『そうかあ、漢字とか教えてくれたんだね。今も音読の練習をしていたで
しょ。進んで練習していてすごいなぁと思ったよ。がんばってね!』
「うん!」
 元気よく返事をすると、再び音読の練習を始めました。
 Aはちゃんとわかっていました。Bのおかげで自分の音読が上達してい
るということを。

 次に、Bと話をしました。
『Aの音読がとっても上手になったでしょ。それで、Aに聞いたら、Bの
おかげだって言っていたよ。どうもありがとう。』
 Bは、ちょっぴり恥ずかしそうに頷きました。
『でね、ちょっと教えてほしいんだけど、ペア音読の時に、気をつけたこ
とや工夫したことはある?』
 Bは、少し考えた後、答えてくれました。
「まずは、漢字を教えてあげたのと、言葉が難しいところがあるから、そ
ういう言葉がある時は、一緒に読んであげた。」
『難しい言葉って?』
「ほら、『モチモチの木』は、昔に使う言葉が出てくるから…。」
『なるほど、そういう言葉がある時は、一緒に読んであげたんだ。とって
もいい方法だね!Bのおかげで、Aの音読がとっても上手になったよ。本
当にありがとう。これからもよろしくね!』
 あまり感情を表に出さないBですが、少し微笑みながら頷くと自分の席
へと戻って行きました。
 B自身も、自分の関わり方が、Aの上達を促しているという実感を持っ
ているようでした。

■インクルージョンの発想の出発点に立つために

 今までの私なら、今回のAの変化に出会っても、
「AはBに教えてもらった。だからAは音読が上手になった。」
という「してあげた」「してもらった」という一方向的な関わり方による
変化としか捉えられなかったと思います。
 私の聞き方が悪く、子ども達の思いに十分に寄り添うことはできません
でしたが、今回、AとBの2人から話を聞くことで、「お互いの心の中で
起こっていたことは何だったのだろう?」と考える機会を得ることができ
ました。AとBの関わり方は、「教えてあげた」「教えてもらった」、と
いった一方向的な関わり方ではなく、お互いがお互いを必要とするような
充実感や達成感を持てる双方向的な関わり方だったのではと感じました。

 インクルージョンの発想の出発点に立つには、私にはまだまだ見えない
ことがたくさんありますが、「手立て」だけにとらわれず、活動中の子ど
もの小さな変化に寄り添い、心の中で起こっていることに耳を傾けながら、
模索を続けていきたいと思います。

授業づくりネットワーク誌の最新号
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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 「Aはちゃんとわかっていました。Bのおかげで自分の音読が上達して
いるということを。」というくだりで、ぐっとなりました。私は、子ども
に学びの変化が起こった時に、子どもに直接聞くことをためらってしまい
がちな教師だということにも気付かされました。
 平嶋さんの原稿を読ませていただきながら、教師もまた、子どもとの双
方向のやりとりによって、「充実感」や「達成感」を得るのかなと、そん
なことも考えていました。

 次号金曜日は、「ハイブリッド」チームから、中村健一さんのご登場で
す。お楽しみに!
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第148号(読者数1764) 2011年10月4日発行
編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
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