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「協同的な学び」を実感するしかけ

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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
                145号 2011年9月27日発行
                      (毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1 「協同的な学び」を実感するしかけ
 ~「特別支援教育の視点」を取り入れた実践イメージの拡大を通して~
ノートルダム清心女子大学  青山 新吾
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 青山新吾さんのご論考です。大学に籍を置かれた青山さんが、新しい時
代を拓く教師になるであろう若い先生方を育て始めた様子が、ぐいぐい伝
わってくる報告です。                 (石川 晋)
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1 「協同的な学び」を実感するしかけ
 ~「特別支援教育の視点」を取り入れた実践イメージの拡大を通して~
ノートルダム清心女子大学  青山 新吾
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 「協同的な学び」
 学習者が相互に交流して学ぶとは、どのような感覚なのだろうか?
 まもなく、幼稚園や小学校、特別支援学校等の教育現場で多様な実態の
子どもたちに関わる、特別支援教育を学ぶ学生への授業の一場面である。
授業の紹介を通して「協同的な学び」を実感するしかけについて考えたい。
 
(1)各自の学び
 事前に、以下の参考図書を示した。各自1冊以上読み、自分にとっての
学びをA4用紙1枚程度にレポートするように告げた。

 参考図書は
品川裕香(2005)心からのごめんなさいへ 一人ひとりの個性に合わせた
        教育を導入した少年院の挑戦 中央法規
青山新吾・上條晴夫(編)(2007)特別支援教育 学級担任のための教育技
        術 学事出版
佐藤慎二(2008)通常学級の特別支援 今日からできる! 40の提案 
        日本文化科学社授業のユニバーサルデザイン研究会(編)
     (2010) 授業のユニバーサルデザイン vol.1~3 東洋
         館出版社
佐藤暁・小西淳子(2007) 発達障害のある子の保育の手だて 保育園・幼
            稚園・家庭の実践から 岩崎学術出版社
品川裕香(2007)輝きMAX! すべての子どもが伸びる特別支援教育 
金子書房
であった。
 幼稚園教諭を目指している学生もいるため、保育現場を対象として書か
れた書籍も選択できるように配慮した。

(2)協同的な学びの手順
 全員が、レポートを作成して授業に臨んでいた。
 参考図書は、一部に偏ることなく、まんべんなく読まれていた。

 この授業は、教育実習を控えた今、「特別支援教育の視点を取り入れる」
とは具体的にどういうことなのかを学び整理することを目的としているこ
とを話した。

 授業では、以下のような手順で進めた。

1 4人グループを作る(ちょうど44人の出席であったのですべて4人
グループとなった)。「伝えたいこと」「学んだこと」が5つずつ記入
できるように作成した情報交換シートを各自に配布する。

2 1人3分で、自分のレポートについて説明する。順番にグループ全員
が説明を行う(12分)

3 3分程度、質問、感想などを各グループで自由に話す。

4 自分の説明や、他の3人のメンバーの話を聞き、自分が「伝えたいこ
と」を5つ決める。各自で、情報交換シートの「伝えたいこと」の欄に
5つ記入する(5分)。

5 講義室内を自由に動き、パートナーを見つける。見つけたパートナー
と、各自1つずつ「伝えたいこと」を話す。相手から新たに教わったこ
とを、情報交換シートの「学んだこと」の欄に記入する(25分)

6 5つある「学んだこと」の欄にすべて記入できたら元のグループの座
席に戻る。各自が、新しく「学んだこと」をグループ内で紹介する
(10分)

7 アトランダムに指名し、全体に紹介したと思う事柄を発表する。必要
に応じて、教師がコメントする。

8 各自で「学びの振り返り」を感想用紙に記入する。

 このアクティビティを活用しての授業は初めてだったが、「協同的に学
ぶ」経験を重ねてきていることもあってか、学生の雰囲気、動きとも自然
な感じであった。特に、活動手順5の、パートナーとの学びの時間に教室
中に響く説明の声が印象的であった。

 学生の感想からいくつか抜粋して紹介する。
「自分の活動が終わったら黙って待たせるのではなく、ジグソー学習の「
みんなで共有して学ぶ」というやり方を取り入れたら、少しユニバーサル
デザインの授業に近づくと考えました。」
「みんなとの話し合いの中でもあった「教え合う」学びを取り入れると、
子ども同士で学びを深めて、子ども同士の言葉で理解できるので、分かっ
ている人もさらに分かり、分からなかった子も分かるようになります。」

 同様の感想が、多くの学生に見られた。
 ピアカウンセリング、相互に助け合う「お友達支援」に着目している感
想も多かった。もちろん、教室環境の整備、わかりやすい伝達の工夫など、
環境整備や教師の技術の重要性への着目もあった。
 幼稚園や小学校の教育活動に「特別支援教育」の視点を取り入れるとい
うのは、具体的にどのようなことなのかについて、少しずつ、多様なイメ
ージを持てるようになってきているようであった。

 また、次のような感想も見られた。
「講義の中でいつも思うのが、自分だけの考えじゃなくて、人の考えも聞
く機会があるし、自分の考えを発表できる場も設けられているので、本当
に助かるし、自分のためになっているということです。自分の中でも、全
く知らなかったことや、なるほど!と思えることがいくつかあって、多様
な考えができたと思います。」
「いろいろな本からたくさんの学びがあることがわかりました。友だちと
話してみて、本を読んで、さらに自分で考えて疑問を出しているところは
本当にすごいと思いました。私は、本を読んで自分の知らなかったことを
知るという程度だったのですが、そこからさらに奥へ踏み込んでいるとこ
ろがすごいです。」

 一人一人に、あらかじめ参考文献を読んだ上でのレポートを課しておい
たことで、個人の責任が明確になった様である。必ず、自分の学びを説明
できる準備がなされていたのである。
 今回のテーマは、限定された答を導き出すようなものではない。ゆえに、
自分が読んだ参考図書以外図書を読んだ人からの説明を聞けたことで、学
びの広がりを実感できた様である。
 また、同じ図書を読んでいた場合であっても、一人で学んでいるよりも
学びが広がったという実感が合ったようである。
 しかし、その説明において、単にアイディアレベルの相互説明ではなく、
教室の様子、子どもの実態と関連させて説明することが不十分な場合も見
受けられた。この点は、日頃から常に、大切にするように話していること
ではあるが、実際にはなかなか難しいことである。この授業では、それを
意識できるための「しかけ」が弱かった。反省である。

 また、中には、自分を表現するのが苦手であったり、上手くまとめて話
すのが苦手であったりすると思っている学生がいる。その学生たちから
「講義の中で、よく、何回か話す機会を与えてもらうので、少しずつ慣れ
てきたように思う」
といった感想があった。
 発表機会の保障は、発表経験を重ねることにつながっている。
 また、いつも聞くだけではなく、自分の考えを表現することが、他の人
の学びにつながっていることを実感できているのではないかと想像する。

 インクルーシブ発想の教育を考える。
 その際の重要な視点に「協同的な学び」があると考える。もちろん「協
同的に学びにくい」子どもたちのことを視野に入れての話である。
 今回の取り組みは、「特別支援教育の視点」を取り入れる具体的な実践
のイメージという「コンテンツ」を学び、そのイメージを広げることを目
的とすると同時に、その学びの過程を通して、まずは「協同的な学び」を
実感することにもつながればとの願いを込めたものであった。

授業づくりネットワーク誌の最新号
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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 私は、教室配置をアイランド型にしたという話を、本MM52号で「教室設
計を変える」と題して書きました。
 http://archive.mag2.com/0000158144/20101126230000000.html
 アイランド型にすることで「協同的な学び」が安定的に起こりやすくな
りました。しかし、一方で「協同的に学びにくい」生徒の存在もはっきり
と見えてきました。青山さんは「インクルーシブ発想の教育を考える」時、
「重要な視点に『協同的な学び』があると考える。もちろん『協同的に学
びにくい』子どもたちのことを視野に入れての話である。」と述べていま
す。4本の柱を立てて進めてきた「学びのしかけプロジェクト」ですが、
1年半にわたって積み上げてきた様々な「エピソード」によって、4つの
柱の関連性が見えてくるようになりました。残り半年も、慎重さと大胆さ
を持って、新しい「学びのしかけ」の在り方を提案していきたいと思いま
す。

 次号金曜日は、「ワークショップ」チームから、筑田周一さんのご登場
です。お楽しみに!
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第145号(読者数1763) 2011年9月27日発行
編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
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けると幸いです。本メールマガジンの内容に少しずつ反映をしていきたい
と考えています。
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 副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之
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