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学びやすさに目を向けた授業

 学びのしかけプロジェクトのメールマガジン。

田中博司さんのご執筆原稿です。

 一人一人の学びやすさに目を向けた授業

を目指したお取組、お考えが綴られています。

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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
                89号 2011年5月10日発行
                        (毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 授業を支える2つの安心感  
         「インクルージョン」編集委員
                東京都・公立小学校教諭 田中 博司
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 週3回発行のいよいよ一回目。「インクルージョン」検討チームから、
田中博司さんです。                  (石川 晋)
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1 授業を支える2つの安心感  
         「インクルージョン」編集委員
                東京都・公立小学校教諭 田中 博司
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1 はじめに

本メルマガでの連載も2年目になりました。改めて自己紹介をします。
私は、通常の学級での特別支援教育に関心をもち、授業づくりを考えて
きました。そして従来の教師主体の授業スタイルの中で、だれでもわかり
やすい、
取り組みやすい授業づくりに取り組んできました。けれどもここ数年は、
より個々の力を伸ばすためには、多様な学び方に対応できる授業スタイル
が必要だと思い、子供主体、活動中心の授業づくりに取り組んでいます。
一方最近では、仕事の立場上、担任としてではなく、学級を外側から見
て助言したり、授業をいっしょにつくったりする役割を担う機会が増えて
きました。そして、このように外側から先生と授業をつくる場合、果たし
てどういった授業スタイルから伝えていけばよいか迷うことが少なくあり
ません。
そこで、今回は、外側からかかわったある学級の様子から、個を意識し
た授業づくりについて考えてみることにします。

2 ある授業の様子から

ある若い先生の国語の授業を参観しました。教師主導の一斉授業です。
授業では、先生が話している時も、友だちが発表している時もどこかで
声や音がしています。子供たちは全体的に集中力を欠いている感じです。
特にAさんは落ち着きがありません。イスを斜めに傾けていて、後ろの
子の机に何度もあたっています。消しゴムがないようで、となりの子のも
のを借りています。その子に小声でしゃべりかけている様子も見えます。
まわりの子は、明らかに不満や不快感を抱いています。けれども担任の先
生は気がついていないのか、特に何も言いません。
一方で、Bくんは、くり返し担任に叱責されています。何度約束しても
すぐに勝手にしゃべってしまうこと、ノートを先生の指示通りに書いてい
ないことが主な要因なようです。

数日後、このクラスで算数専科の先生が授業をしていました。授業は同
じく一斉授業の形態です。この授業を私は若い担任の先生といっしょに参
観していました。
担任の先生の授業に比べると、子供たちは集中して授業に取り組んでい
ます。
授業の後、担任の先生は、私にこんな風に言いました。
「○○先生は、そんなに厳しく言っていないのに、なぜみんなが集中でき
るのか。自分はほめたいと思っても怒ってばかりだ。それなのにみんな静
かにならない。」

実はこの日の授業で、この算数専科の先生は2度厳しく怒っています。
1つめは、となりの子のものを勝手にいじっていたAさんに対してです。
2つめは、友だちの発表について馬鹿にした発言をしたBくんに対して
す。でも、Bくんが叱られたのはその1回だけです。他のBくんの余計な
発言は無視されていました。でも、授業に関する発言の時はとりあげられ
て、時にはほめられていました。きちんと書いていないBくんのノートに
は、専科の先生自身が時々必要なことを書き込んであげていました。
そのことを若い先生と確認した後、この専科の先生は、担任の授業には
ない2つの安心感を子供たちにもたせていると話をしました。
1つめは、子供たちが傷つくことなく学級にいられるという安心感です。
専科の先生は、まわりの子に不快感を与えているAさんと、発表した友だ
ちを傷つける発言をしたBくんを厳しく叱りました。相手に嫌な思いをさ
せる行為は許さないという現れです。
2つめは、自分にもできるという安心感です。叱責の多かったBくんで
すが、発言についてあまり叱られることはなく、逆に何度かほめられまし
た。きちんと書いていなかったノートは先生の手助けのおかげできれいに
仕上がっていました。

こんなやりとりを通して、私は授業づくりにまず大事なことは、この安
心感なのではないかと強く感じました。そして、この2つの安心感をもと
に、若い先生との授業づくりについて考えてみました。

3 2つの安心感から授業づくりを考える

若い先生には、まずは教師主導の一斉指導がきちんとできるように伝え
ることが多いです。けれどもそうした授業がうまくなっても対応できない
ケースも増えています。一斉指導だけでは、「できない」「わからない」
子が増えてきているからです。
でも、一斉指導の中でもこうした子供たちにうまくかかわっている授業
もたくさんあります。それは、教師が、子供たち一人一人に「できる」「
わかる」という安心感をもたせようという配慮や支援をしている授業です。
このように教師が子供たち一人一人の「自分にもできる」という安心感
を意識してはじめて、個に対応した一斉指導が成り立つのだろうと考えま
す。

ただ、現在の社会では、個に配慮した一斉指導だけでは十分ではなくな
ってきています。より多様な学び方を意識したインクルーシブな授業づく
りが求められてきています。
けれどもこうした授業スタイルは、なかなか若い先生には伝えにくいで
す。それは、学びやすさを意識したインクルーシブな授業づくりは、学級
の中に、どの子も、自分は傷つけられないという安心感が育っていないと、
なかなかうまくいかない授業だと思うからです。
なぜなら、こうした授業は「活動」「子供主体」「かかわり合い」が中
心になります。こうした要素は、子供たちが互いに安心できる関係でない
となかなか成立しにくいものです。
私は、本メルマガの執筆者でもある岩瀬直樹氏の実践をインクルーシブ
な授業として1つの理想としています。その岩瀬氏の学級づくり・授業づ
くりが書かれた本が出されました。『よくわかる学級ファシリテーション』
(解放出版社)です。
その中に岩瀬氏のこんな言葉が書かれています。
「教室は、安心、安全の場所だから、人の心や体を傷つける行動は怒る
よ」
岩瀬氏は、学級づくりの早い段階で子供たちにこう話すそうです。
こうした教師としての強い意志をもって、子供たち一人一人に、「自分
は傷つけられることはない」という安心感をもたせられるようになること
が、学びやすさを意識した子供主体、活動中心の授業を成立させていく大
きな要因になるのだろうと思います。

4 終わりに

 自分の教室を見ていても、まわりの教室を見ていても、多様な子供たち
の多様な学び方に応える授業ができたら、この子たちはもっと学校が楽し
くなり、もっと力をつけられるのだろうなと思うことが少なくありません。
でも、自分自身でもそんな授業にはまだ遠く及びませんし、まわりの先
生にそれを伝えていくことは更に難しいことです。
どうすれば私たちの授業がそんなインクルーシブな授業に近づいていけ
るのか、この連載を通して考えていきたいと思います。

授業づくりネットワーク誌
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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 田中さんは、「インクルーシブな授業」に「遠く及びません」とご自分
の授業のことについて謙遜されてます。ただ、一読して私は、田中さんに
寄り添ってもらい、価値づけ・分析をしながら共に学んでいける若い同僚
の方がとてもうらやましいなあと思いました。
 岩瀬直樹さんの本、実は今春二冊刊行になっています。田中さんご紹介
の『よくわかる学級ファシリテーション』(解放出版社)はこちら。
 http://www.amazon.co.jp/dp/4759221476/
 そしてもう一冊の『クラスづくりの極意』(農文協)はこちら。
 http://www.amazon.co.jp/dp/4540102516/
 それぞれ手に入れることができます。
 次号は13日。ワークショップチームから山田将由さんです。どうぞお
楽しみに。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第89号(読者数1671) 2011年5月10日発行

編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
  ぜひ、読者のみなさんの声をお聞かせ下さい!
編集長:石川晋
副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之

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