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多様な学び方に対応するためにー各自の強みー

 山形県の増川先生のご論考です。

 子どもたちの多様な学び方に対応するためには、教師各自の「強み」を

活かせることが大切だ・・・と強く思います。

 一人でなんでもかんでも全部できないし・・。

 いろいろな教員が、いろいろ人が「それぞれの強み」を活かすことを

教わりました。

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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
                93号 2011年5月20日発行
                        (毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1 インクルージョン発想の授業づくりその2
     「インクルージョン」編集委員
       山形県・公立小学校   増川 秀一
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 インクルージョンチームから、増川秀一さんです。「活動を中心とする
授業」の記録として、抜群の切れ味です。じっくりお読みください。
                           (石川 晋)
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1 インクルージョン発想の授業づくりその2
     「インクルージョン」編集委員
       山形県・公立小学校   増川 秀一
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 今年度、私は小学校6年生23名を担任しています。現在、市の陸上競
技大会に向け、毎日練習に励んでいます。私が勤務する市の陸上競技大会
では、原則として市内の6年生全員が100Mと70Mハードルに出場します。(
車いすにのっている子どもさんは、その子に合った距離で100M走のみ出場
します。)以下、陸上練習の1コマです。

 100M走の動き作りということで、私が子どもたちに動き方のモデルを示
しながら「こきざみ走」「もも上げ走」「大また走」などの練習を進めて
いました。「こきざみ走」は走り初めにピッチを上げ、スピードをつける
ための練習。「もも上げ走」「大また走」は、一歩あたりの歩幅を広くす
ることをねらっての練習です。
 しかし、体格がよく体重のあるK君やT君は、「うでを速く、大きくふっ
て。」「ももをもっと高く上げて。」などの声がけを行ってもなかなかう
まくできません。くり返し練習しても、走り方にほとんど変化は見られま
せんでした。そこで、このような状況を何とか打開したいと考え、翌日、
体育指導を得意とされているN先生に相談しました。すると早速、以下の
ような指導を行っていただきました。

 まず、N先生はグラウンドの100Mコースの1レーンから4レーンまでにミ
ニハードルをならべました。1レーンには50cm間隔で10台、2レーンには
60cm間隔で10台、3レーンには70cmメートル間隔で10台、そして、4レーン
には80cm間隔に10台のミニハードがならべられました。子どもたちは、
「これから何をするのだろう。」と、興味深く見つめていました。
 次に、N先生の「一歩ずつのリズムで、ミニハードルに足をぶつけない
ように跳びましょう。」といった指示で、子どもたちは、50cm間隔のミニ
ハードルを跳び始めました。最初は途中でリズムがくずれ、「うわあ、ぶ
つかる。」などとさけび、ミニハードルを蹴り上げる子どもが多数いまし
た。しかし、50cm間隔のミニハードルを確実に跳び越えようと、楽しそう
な表情を浮かべなから夢中で取り組んでいました。しだいに、多くの子ど
もがトン・トン・トン・トンといった1歩ずつの同じリズムでミニハード
ルを跳ぶことができるようになってきました。私が注目していたK君やT君
も、ゆっくりなペースでしたが、1歩1歩確実に手足を動かしながら練習に
取り組んでいました。
 3回目ぐらいになると、幅のせまい50cmのミニハードルを跳ぶ子どもた
ちの動きにも変化が表れてきました。うでをこきざみにふり、ももをすば
やく上げながら、速いリズムで正確に跳び越える子どもたちが増えていっ
たのです。K君も、うでを動かすリズムが速くなり、4回目には、10台全て
のミニハードルを跳び越えることができました。T君もミスはしたものの、
リズムよく跳び越えることができるようになっていました。
 その後も、60cm幅、70cm幅のミニハードルを4回ずつくり返し、いよい
よ最後の80cm間隔のミニハードルへの取り組みが始まりました。「何だか、
ハードルとハードルの間が広いよね。」などのつぶやきも聞こえましたが、
子どもたちもやる気満々の様子でした。
 80cm間隔のミニハードルの場所では、50cm間隔のハードルの場とはちが
い、一歩あたりの歩幅を大きくする必要があります。1回目は、スピード
が足りなかったり、歩幅がせまかったりといった理由で失敗する子どもが
多く見られました。しかし、次第にうでを大きくふり、大またで走る子ど
もたちの姿が見え始めてきました。そして、3回目にはK君やT君も、トー
ン・トーン・トーンといったリズムで跳び切ることができるようになりま
した。私が、何度声がけをくり返しても、正しいこきざみ走や大また走の
できなかった2人が、N先生が用意された場で練習したことでできるよう
になりました。
 では、N先生はどうして上記のような指導を行うことができたのでしょ
うか。私は、前回のメールマガジン(72号:2011年2月11日発行)で、特
別なニーズのある子どもに対応した、教師の授業づくりへの発想の視点と
して、(1)子どもの学び方の把握、(2)授業目標の設定、(3)教師の引き出
しの3点を提案しました。再度、この3つの視点に当てはめながら、上
記のN先生の実践を考えていきたいと思います。

(1)子どもの学び方の把握
 「子どもの学び方の把握」とは、教師が子どもの学び方の特性を見取り、
子どもの多様な学び方に対応した授業を仕組んでいくことが大切であると
いう考え方です。
 N先生は、K君やT君は体格が大きく、昨年度の校内マラソンでも最後尾
を苦しそうに連なって走っていたことを知っています。さらに、 A走る
ことに苦手意識はあるが、互いに負けたくないというライバル心を持って
いる。 Bただ走るだけの練習では意欲が続かず、なんらかのゲーム性が
あると学習にのってくる場合が多い。といった情報も私との会話から得て
いました。
 N先生が設定した練習の場は、1回の走る距離が短く、ミニハードルの高
さも20cm程度と低いために、体格のよいK君やT君にとっても抵抗感が少な
く、簡単に跳び越えることが出来そうに感じます。しかし、実際にやって
みると、ミニハードルに足をぶつけたり、リズムをくずし失敗したりする
子どもが多く見られました。このように、「簡単にできそうだけれど実際
にやると難しい。でも、練習すれば何とかできそう。」といった状況が、
「次こそは失敗しないぞ。」といったK君、T君のやる気を促すともに、「
○君には負けないぞ。」といったライバル心をくすぐり、練習意欲を高め
るきっかけになったと考えられます。

(2)授業目標の設定
 「授業目標の設定」とは、教師が具体的な目標から抽象的な目標へと設
定を変えることで、子どもの感性や創造性、個性の尊重に向かう授業への
可能性が高まっていくという考え方です。
 上記の実践で、私は、「手足をこきざみにすばやく動かす」「うでを大
きく速くふって、大またで走る」などと、手足の動かし方を具体的な目標
として子どもたちに示しました。それに対し、N先生は、「一歩ずつのリ
ズムで、ミニハードルに足をぶつけないで跳ぶ」といった、手足の動かし
方には全くふれない抽象的な目標を子どもたちに示しました。
 具体的な目標が示された「こきざみ走や大また走」と違い、目標の抽象
度が高い「間隔の違うミニハードル」の練習の場合、子どもたちは、うで
のふり方やももの上げ方といった技術的なことよりも、間隔の違うミニハ
ードルを、できるだけ速く、正確に跳び越えることだけを考え、夢中にな
って練習していました。結果として、「うでを速く、大きくふって。」「
ももをもっと高く上げて。」などの声がけを行ってもなかなかうまくでき
なかったK君やT君が、N先生が用意した「間隔の違うミニハードル」でく
り返し練習することにより、こきざみ走や大また走で必要なうでのふり方
やももの上げ方の感覚を身につけることができました。さらに、K君やT君
以外の子どもたちもくり返し練習に取り組み、それぞれのミニハードルの
場に合った走り方を感覚的に身につけることに成功しました。
 以上の様子から「間隔の違うミニハードル」といった活動は、子どもた
ちの学びやすさという点からも有効であったと考えられます。では、「間
隔の違うミニハードル」という場作りの発想を、N先生はどこで習得され
たのでしょうか。

(3)教師の引き出し
 「教師の引き出し」とは、それぞれの教師が、これまでの実践や研修等
で身につけてきた指導技術や授業ネタ、アクティビティー等の財産のこと
です。 
 N先生は、市内の小中学生が所属している陸上チームの指導者としても
活躍しており、そこで、様々な練習方法や用具の使い方を考えたり、強豪
チームの練習視察から新しい練習方法を学んだりしています。また、市販
の鉄でできているミニハードルは、値段が高い上に、足に当たると痛いと
いう理由から、今回使用したミニハードルは、N先生が塩ビ管で自作され
たミニハードルであったこともわかりました。
 結果として、K君やT君をはじめ、運動に苦手意識を持っている子どもた
ちは、ミニハードルに足をぶつけても傷みを感じることがなかったため、
スピードを落とすことなく、くり返し練習に取り組むことができました。
用具に対する子どもが抱く恐怖心までも配慮しながら場づくりが行われて
いたことに驚くとともに、N先生の持つ引き出しの奥深さを感じることが
できました。
 N先生からは、「これまでは、教師がこきざみ走や大また走など、走り
方の部分を取り上げ、子どもたちに走り方を説明しながら指導してきた。
しかし、ミニハードルの間隔を変えてならべることで、子どもたちに、
こきざみ走や大また走の感覚を自然に身につけさせることができる。陸
上指導も、こちらが走り方を教える指導から、走りに必要な感覚を自然
に獲得できるような場づくりを工夫する指導へと変わってきているよう
だ。」といった内容の話をお聞きしました。そして、N先生が上記のよう
な指導スタイルに変わったきっかけとして、 A所属している陸上クラ
ブでは、練習の場づくりを工夫することで、競技に必要とされるな動き
や感覚の育成がさかんに行われていること B過去に、授業成立が難し
いと言われた学級の体育授業でも、場づくりを工夫することで、運動に
対する子どもたちの意欲が高まり、結果として技能を高めることができ
たという経験 C効果的な場づくりを考え、実践し、子どもたちの意欲
や技能に高まりが見られた時の教師の楽しさ等をあげていました。
 N先生は、研修会等で新たな練習の場づくりを学ぶと、それらを再度
実践し、子どもたちがより楽しく取り組めるように、アレンジを加える
姿をよく見かけます。さらに、グラウンドには、授業前にすぐ白線を引
くことができるよう、目印となるマーカーが事前に打ち込まれています。
このような、授業前の周到な準備の積み重ねからも、N先生の場作りに
対するこだわりを感じることができます。そして、そのような教師のこ
だわりや自主的な学びが、「教師の引き出し」の更新を促す上で大切な
要因となっていることがわかりました。

 以上、(1)子どもの学び方の把握(2)授業目標の設定(3)教師の引き
出しといった3つの視点をもとに、N先生の実践について考えてみまし
た。その結果、N先生の実践では、「運動技能を教える指導から、運動
に必要な感覚が自然に獲得できるような場作りへのシフト」といった学
びのしかけを明かにすることができました。また、「子どもの学び方の
把握」を前提としながらも、「教師の引き出し」、つまり、N先生のこ
れまでの指導経験やこだわりといった要素が、今回の授業発想のもっと
も大きな要因となっていたことがわかりました。  
 今後も、この3点を意識することで、インクルージョン発想の授業づ
くりを進めていくことができるのか、様々な実践に当てはめながら考え
ていきたいと思っています。

授業づくりネットワーク誌
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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 記録と分析の素晴らしさもさることながら、ぼくが注目したのは、N先
生と増川さんのかかわり合いということになります。ぼくは中学校の教師
です。中学校は周知の通り、職員同士のチーム意識が様々な学習活動を進
める上で大変重要なのです。ですが、小学校の場合は、多くは学級の中で
様々な問題が解決されていくことが多いように感じています。同僚の得意
をリサーチしていること、そして協同で指導に当たろうとする姿勢、この
あたりを増川さんがどのように身につけていったのか。ぼくも増川さんの
ライフヒストリーに興味が高まりました。
 次号は日曜日。ワークショップチームから、初登場岡山洋一さんです。
ディベートトレーナーとして、そしてファシリテーターとして、注目の仕
事を長くされてきた方です。お楽しみに。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第93号(読者数1678) 2011年5月20日発行

編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
  ぜひ、読者のみなさんの声をお聞かせ下さい!
編集長:石川晋
副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之

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